12/30 十字架のカルテ 知念実希人

面白かった

医療系の話、特に精神疾患についてこんなにリアルに触れつつミステリーとしてまとめられるのはこの作者の強みだなと感じる。

医療ミステリーと聞くと堅いイメージがあるが、主人公の凜は頭いいながらかわいさもあってそこがこの小説で一番魅力的だった

けどそういった登場人物のバラエティ感が雰囲気を崩してもいるのかなとも思ってしまった、、シリアスなパートで人格描写があまりに素人の想像通りすぎるので笑えてしまう

 

精神疾患の鑑定、数値で測定できない分論理や証拠で診断を裏付けなければならないという点で、医者というより刑事や弁護士に似たものがある

現実の精神科医もこんな感じなのかな、影山くらい真摯に向き合うのは簡単でないはず、、

支離滅裂で時に凶暴になる、理解の範疇を超える人間の心理に触れるのは並大抵の精神力では務まらないだろうなぁ

 

精神疾患と診断された人間が犯した罪の十字架を誰が背負うのか、この作品のテーマではあるが、現在の社会では答えが出せないという結論

いくら病気で責任能力がなかったとしても、被害者からしたら被害にあった事実は変わらない

影山も精神病患者に対する社会の在り方に対して理想を持ってはいるが、そこを考えるのは鑑定医の越権だとあきらめている

影山が理想とするシステムはいつかの未来で生まれるのだろうか、、とても生まれるとは思えない、、、

 

序盤の話は想像を超えないストーリーで少し退屈だったが、最後のエピソードはとてもわくわくしながら読めた

事件の真相が気になるのはもちろん、凜の成長を感じながら読めたのが大きい

凜のキャラがよかったねほんとに

少しきれいに進みすぎ?とも思うが、それを含めても面白かった

 

4/5